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第29話地獄行きエスメラルダ

翌朝、疲労困憊のアンジェラは、目を開けるのもやっとだったが、部屋に満ちる馴染みのあるアフターシェーブの香りが、レオナルドの存在を示していた。彼は静かにベッドの端に腰掛けていた。

「ここで何をしているの、レオナルド?」アンジェラは疲労をにじませた声で尋ねながら、慌ててピンクの毛布で体を覆った。

「こんな時間までベッドにいる理由を訊くべきは、むしろ俺の方かもしれんな。今何時か分かっているのか? 俺は目が見えないが、もう朝の八時だということは分かる。お前は俺の朝食に一時間遅刻だ。七時までには準備しておくことになっていたはずだが」レオナルドは、いら立ちを隠せない声で言い返した。

「あ、申し訳ありません...