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29話

他のテーブルから聞こえるカトラリーが磁器の皿に当たる音が、死にたくなるほど耳障りだ。でも、それは向かいに座っているこの男ほど煩わしくはない。

四十路に差し掛かるこの男、今夜の話題はコミックのことばかり。

誤解しないでほしいが、私もある程度は好きだ。でも、ロマンチックなデートでそんな話をしたいわけじゃない。

「アベンジャーズの映画を全部見たかどうか知らないけど、細部を見逃さないように注意しないと、完全に置いていかれるよ」と、まるで貴重な情報を教えてくれているかのように言う。

笑いそうになるけど、失礼になりたくない。この二時間、彼が私のことを何一つ気にかけていないと思うけれど。

ウェイタ...