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205話

強いコーヒーの香りが部屋に満ちていた。テーブルの上のカップを見つめながら、私はそれを飲む気もなく、まるで自分が時間そのものであるかのように、ただ時が過ぎるのを眺めていた。液体から立ち上る熱が繊細な渦を描いて蒸気となっていたが、私の心はどこか遠くにあった。

昨夜のことはぼんやりとしか覚えていない。安っぽいワインや疲れのせいではなく、必要以上に心の壁を下げてしまったという不安な感覚のせいだ。問題は言葉ではなかった。問題は、すべてが宙ぶらりんのまま残されたことだった。

ジュリアンが私を見つめた方法...神よ、彼に触れられなくても、彼の存在を感じることができた。私たちの間の沈黙が奇妙に感じられなか...