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55話

| マラカイ |

彼女の香水の香りは、顔を見る前に私を襲う。それは懐かしく、痛ましいほど馴染みのある香りだが、かつてのように私に影響を与えることはない。ジュリアが目の前に立っている。相変わらず美しく、青い瞳は希望と不安が入り混じって輝いている。

「マラカイ」彼女は息を吐き、私の腕に触れようと手を伸ばす。

私は一歩後退し、私たちの間の距離を保つ。彼女の存在に対する、この新たな免疫力は奇妙だ。つい最近まで、彼女のことを考えるだけで、渇望と絶望の深みにはまっていただろう。今は、古い傷跡をつついたような鈍い痛みしか感じない。

「ジュリア」私は冷静に制御された声で認める。「ここで何をして...