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第55話

クラブは、ゾラが思い描いていた通りだった。明るく点滅する光、大音量で響き渡る音楽、ダンスフロアに群がる人々、そして汗とアルコールの匂いが鼻を突いた。

イカロは彼女の手を取り、人混みを掻き分けて階段を上がっていった。「VIPだ!」彼は音楽にかき消されそうな声で叫んだ。

「ゾラ、これってすごいわ!」シドニアは音楽に合わせて嬉しそうに手拍子をしていた。「こんな場所に来るなんて夢にも思わなかったわ!」

ゾラは、リズムを外しながらも頭を揺らしている親友を見て、思わず微笑んだ。ケトゥラはシドニアを興奮気味に引っ張って階段の上で誰かに会わせようとしたが、イカロはゾラの手をしっかりと握ったままだった。

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