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第53話

ゾーラは驚いた。ディナーが片付けられ、ホテルのスタッフがバルコニーを元に戻した後、イカロが彼女に手を差し出したのだ。

「何をしているの?」

「僕と踊ろう」彼は携帯のボタンを押すと、音楽が流れ始めた。「スタッフが場所を空けてくれたんだ。せっかくだから使わない手はないだろう」

彼女は唇を噛んだ。「踊り方なんて知らないわ。踊ったことがないの」

「踊ったことがない?」彼は彼女の言葉に恐ろしく驚いた様子だった。

「ええ」

「学校でダンスパーティーとかなかったの?」

「女子校のカトリック学校だったのよ。女の子同士で踊るなんて奨励されなかったわ」

「君とシドニアは一度もナイトクラブで踊ったことがない?」

「...