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第151話

デリラ

スープの缶を手に、兄の頭の後ろを睨みつけながら、今にも投げつけようとしている私は、おそらく50億回目くらいに思う。どうして彼ほど馬鹿な人間がいるのだろうかと。彼は普通に生まれてきたはず。少なくとも、そう思う。まあ、私は彼が孵化する時にはその場にいなかったから、母が出産の話をする度に省略した詳細があるのかもしれない。父の話は母のとほぼ完璧に一致していた。きっと練習したんだろう。何か事件か、見えない変数があったに違いない。彼が生まれた瞬間に衝撃波が起きたとか、看護師が彼の体を強く包みすぎて血液がうまく流れなかったのかも。何が起きたのかはわからないけど、何かあったはず!だっ...