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第4章 敵に会う

再び目を覚ました時、白川由紀子の携帯が鳴り続けていた。

彼女が電話を取ると、興奮した声が聞こえてきた。

「ボス、やっと電話に出てくれましたね!大きな注文があります。井上グループがデザインを依頼したいと言っていて、報酬は200億円です!」

白川由紀子は微笑んだ。「わかった、詳細は戻ってから話そう」

「了解です、ボス!」

電話を切った後、白川由紀子は周囲を見回し、自分が何をしていたのかを思い出そうとした。ちょうどその時、看護師が近づいてきた。

「目が覚めましたね。あなたが連れてきたお年寄りは命の危険を脱しました。今、あなたに会いたがっています」

「私に?」白川由紀子は眉をひそめた。まさか、詐欺に遭ったのでは?

どちらにせよ、白川由紀子は老人の様子を見に行くことにした。病院で一人きりの老人は気の毒だ。

もし詐欺だったとしても、タクシー運転手が証人になってくれるだろう。

看護師に案内されて病室に入ると、そこには老人だけでなく、見覚えのある男性がいた。

彼女は目を見開いた。「ホームレス!」

「ホームレス?」

二人は同時に驚いた。

白川由紀子は目の前の男性を恨めしそうに見つめた。彼のせいで家を追い出されたばかりだったのだ。

井上拓海も驚いた。おじいさんの命の恩人が彼女だとは思わなかった。

ホテルを出た後、星野遥に電話をかけて彼女の説明を聞こうとしたが、連絡がつかず、再度かけても話中だった。

怒りが収まらない中、病院から電話があり、おじいさんが心臓発作を起こし、誰かに病院に運ばれたと聞いた。

井上拓海は急いで病院に駆けつけ、おじいさんが無事だと知り、ほっとした。

おじいさんは命の恩人に直接感謝したいと言い、彼も同意した。

数時間前に親密に過ごした女性を見て、井上拓海の表情は険しくなった。

薬のせいで女性が誰か分からなかったが、今は彼女を見て、いろいろと考えが巡った。

こんな短時間で、どうしてこんな偶然が起こるのか。おじいさんの命の恩人が彼女だなんて。

彼女が意図的に接近してきたのではないかと疑い始めた。なんて奥深い女だ。

病床に横たわる井上おじいさんは、二人が互いに敵意を向け合う様子を見て、疑問を抱いた。

「君たち、知り合いか?」

二人は同時に顔を背け、冷たい態度で答えた。

「知らない!」

「知らない!」

またもや同時に。

井上おじいさんは二人を見比べたが、どう見ても知り合いのようにしか見えなかった。

彼は咳をして、白川由紀子に手招きした。彼女は一瞬ためらったが、近づいた。

「お嬢さん、ありがとう。君が助けてくれなかったら、私はもう生きていなかったかもしれない。井上家は恩を忘れない。何か欲しいものがあれば、遠慮なく言ってくれ」

白川由紀子は老人が恩返しを申し出るとは思わず、慌てて手を振った。

「いえ、おじいさん。私はただの人助けです。誰でも同じ状況なら助けたでしょう」

命がかかっているのだから、彼女は見返りを求めて助けたわけではない。

彼女が言い終わると、横から嘲笑が聞こえた。

「何を偽っているんだ。俺に接近し、おじいさんに接近するのも、井上家の財産が目当てだろう?」

男性の目は冷たく、白川由紀子は不快そうに彼を見つめ、冷笑した。

「あなた、誰だと思ってるの?ビル・ゲイツか何か?誰もがあなたに接近したいと思うわけないでしょ?笑わせないで」

男性の顔がますます黒くなるのを見て、白川由紀子は目を翻した。

ホームレスのくせに、自惚れてるなんて!

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