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第3章 人を救う

ホテルの従業員が服を届けに来たとき、白川由紀子の目は真っ赤に腫れていた。彼女は服を着替え、すぐにタクシーを呼んで病院へ向かった。

白川美月が特別に探してきた人が、何か病気を持っているかもしれないので、まずは検査を受けて安心したい。

タクシーに乗り込むと、白川由紀子は小切手を取り出し、頭の中にあの男の顔が浮かんだ。

どう見てもホームレスには見えない。もしかして、白川美月が彼を特別に偽ったのだろうか?

そんなことを考えていると、車が急ブレーキをかけて止まった。

「前の道が塞がっている」と運転手が前方を見つめ、眉をひそめた。

白川由紀子は前の座席にぶつかりそうになり、慌てて胸を押さえた。顔を上げると、前方に一台の車が道の真ん中に横たわっていた。

今は深夜で、道にはほとんど車がない。その車が道の真ん中に停まっているのは非常に目立つ。

周囲には事故の痕跡がなく、事故ではなさそうだ。運転手が車を降りて確認し、急いで戻ってきた。

「あの車の中の老人が病気を起こしたみたいだ。すぐに警察に連絡しないと」

運転手が携帯を取り出して電話をかけようとしたとき、白川由紀子は前方の運転席にいる老人の顔色が青白く、ハンドルに寄りかかって動かないのを見た。

白川由紀子は車を降りて老人を確認した。心拍が遅く、呼吸も浅い。このままでは危ない。

「警察が来るのを待っていたら間に合わない。ちょうど私も病院に行くところだから、一緒に連れて行こう!」

運転手は頷き、二人で老人を車に乗せ、病院へ急行した。

幸い、この時間帯は道が空いていて、すぐに病院に到着した。

「医者!急患です!」

当直の医者と看護師がすぐに老人を手術室に運び込んだ。白川由紀子は息を切らしながら、運転手がすでに去っているのに気づいた。

看護師が近づいてきた。「患者のご家族ですか?患者は急性心臓病で、入院して観察が必要です」

白川由紀子は首を振った。「いいえ、私たちはただ道で出会って、運転手さんと一緒に連れてきただけです。私も診察を受けに来たんです」

看護師は疑わしげに白川由紀子を見つめ、ぶつぶつ言いながら去っていった。

白川由紀子は自分が老人を轢いた加害者と勘違いされたことに気づき、苦笑した。

今はそんなことを考えている暇はなく、検査室へ急いだ。

病院にはあまり人がいなく、数人の患者が院内をうろついているだけだった。

検査所の看護師は不機嫌そうに一枚の用紙を渡し、血液検査を受けるように指示した。

白川由紀子は用紙を持って採血室に向かい、しばらく待っていると看護師が急いでやってきた。

「袖をまくって、腕を出してください」看護師は手際よく針を準備し、作業を進めた。

三本指ほどの太さの注射器と太い針を見て、白川由紀子の歯が自然と震えた。

看護師が近づくにつれ、白川由紀子の顔色はますます青ざめ、過去の記憶が潮のように押し寄せてきた。彼女は反射的に抵抗したくなった。

しかし、あの男が持っているかもしれないウイルスを考えると、歯を食いしばって腕を差し出した。

針が皮膚に刺さると、白川由紀子は頭から足まで震え、顔を背けて見ないようにした。体は硬直し、血液が凍りついたように感じた。

看護師が何度も呼びかけて、ようやく彼女は我に返った。看護師は三本の血液を採取し終えていた。

彼女は採血した腕を握りしめ、震えが止まらなかった。

白川由紀子が受けたのは完全血液検査で、結果が出るまで数時間かかる。

彼女は病院の長椅子に座り、ぼんやりとしていた。看護師は彼女の顔色が悪いのを見て、ベッドで休むように手配した。横になると、彼女はすぐに意識を失った。

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