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第24章 取引

白川由紀子は急いで視線を逸らし、「まあ、こんなに美味しいお菓子を食べさせてくれたから、今回は許してあげるわ」と言った。

その様子を見て、井上拓海も思わず口元が緩み、身を乗り出して近づいた。

「ちょっと、お願いがあるんだ」

「何?」

白川由紀子は振り返り、井上拓海と目が合った。彼の体から漂う木の香りが鼻をくすぐり、心臓がドキドキしていた。

「な、何するのよ!」彼女は慌てて後退し、顔が赤くなった。

井上拓海は目の前の、普段は怖いもの知らずの彼女が、真剣な時には恥ずかしがる姿を見て、なんだか可愛く思えた。

彼は咳払いをして、自分の考えを口にした。

「君にお願いしたいんだ、僕と結婚し...