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第6章
絵里視点
和也が振り返った瞬間、私は息を呑んだ。彼が誰だか、ほとんど分からなかった。
やせ細り、頬は深く落ちくぼんでいる。無精髭に覆われた顎のラインは、かつての精悍さを失っていた。何よりも私を打ちのめしたのは、彼の瞳だった。生命の輝きに満ちていたあの深い緑色は、今は色褪せ、果てしない痛みと絶望を映して、ただ虚ろに揺れていた。
でも、それでも。魂を凍らせるような衝撃の中で、心だけが叫んでいた。私の和也だ、と。
「絵里……」彼の声は、砂に擦れたようにかすれていた。「どうして、ここに……」
「和也……生きてたのね」私の声は震え、堪えていた涙が堰を切ったように溢れ出した。「本当に、生...