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第5章

絵里視点

私の度重なる懇願の末、悠斗はついに、重い口を開いた。告げられたのは、退役軍人リハビリセンターの住所と、和也の部屋番号。その瞬間、心臓が喉元までせり上がってくるのを感じた。手のひらがじっとりと汗で湿る。

『三年ぶり……。もうすぐ、彼に会える』

その思いだけが、私を突き動かしていた。

リハビリセンターの長い廊下を、私は走るのも同然の速さで進んでいた。悟が後ろからついてきてくれる気配を感じる。「三百十五号室……!」ドアに掲げられたプレートを確認し、一度だけ、震える息を深く吸い込む。そして、祈るような気持ちでドアを強くノックした。

返事はない。

しんと静まり返った部屋...