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第4章

ペントハウスのエレベーターは、沈黙の中を三十階まで昇っていった。悟が腕の中の最後の段ボール箱を持ち直し、私を横目でちらりと見た。

「本当にこの部屋でいいのか、絵里? とんでもない見せつけ方だけどな」

私は答えの代わりに、指先で『一億円の楽園』への扉を開く。眼下に広がるのは、A市の摩天楼をひざまずかせるかのような、床から天井まで続く絶景。それは、新たな世界の玉座だった。

「それこそが狙いよ」

そのペントハウスは、悪趣味なほどに完璧だった。磨き上げられた大理石と冷たいクロームが空間を支配し、窓の外に広がる夜景は、それ自体がダイヤを敷き詰めたように輝いていた。その景色が持つ傲慢なまで...