私は死んだ。でも、消えることはなかった。

バスタブの上に浮かび、自分の死体を見下ろしていた。手首を切り裂き、カミソリの刃をまだ握りしめたまま、血で赤く染まった湯船の中で。

彼が私を発見する瞬間を完璧に計算していた。彼を罪悪感で苦しめるために。でも扉を開けた彼は笑っていた——冷たく、毒々しい笑みを浮かべて。

バスタブのそばにしゃがみ込み、彼は囁いた。
「これで彼女もやっと安らかに眠れる」

その時、私は理解した。私の死は無意味だったのだと。彼はずっと、私が元恋人を殺したと信じていたのだ。私の自殺こそが、彼の望んでいたことだったのだ。

彼は警察に電話をかけ、偽りの狂乱を演じた。その後、彼の心理的拷問を記録した私の日記を燃やした。でも、彼のトラウマを癒そうとした私のメモが書かれたページに辿り着いた時、彼の手は激しく震えていた。

私は見えない鎖に縛られ、私を破滅させた男の後を追い続け、彼の歪んだ演技を最後まで見届けることを強いられていた。

復讐は裏目に出た ～彼が殺したのは、たった一人の恋人だった～


絵里視点
三日間。
それが、和也が同じソファに沈み込み続けていた時間だった。空になったバーボンのボトル群は、さながら自らの破滅を祀る歪んだ祭壇だ。
私は彼のリビングの隅に浮かびながら、自分を殺した男が目の前で朽ちていくのを見ていた。カーテンは太陽を拒むように固く閉ざされ、部屋は永遠の黄昏に沈んでいる。アルコールと汗の匂いが、空気に満ちていた。
「君もこうだったんだろう、絵里。この、クソみたいな虚しさを感じてたんだろ」
男は、また一本、空き瓶に話しかけていた。呂律の回らない声が、途切れ途切れに漏れる。軍人然とした短髪は伸び放題で、脂ぎって束になっていた。こけた頬は、剃り忘れた...

第9章