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第10章
絵里視点
私が決意を固めたとき、カミソリは和也の手首で鈍い光を放っていた。
何週間も、私は彼が壊れていくのをただ黙って見ていることしかできなかった。でも、私が死んだのと同じこのバスタブで、彼が手首を切ろうとしているのを見ていられるはずがない。そんなこと、させない。
私は霊体としてのありったけの力をかき集め、生と死の狭間にあるヴェールを突き破った。
暖かい金色の光がバスルームに溢れた。和也は凍りつき、カミソリを肌の上に彷徨わせていた手が震える。
「和也、やめて。お願いだから、そんなことしないで」私の声が、白いタイルに反響した。
彼は勢いよく顔を上げた。そして、私が死んでか...