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第7章
玄関のドアを開けた瞬間、私は思わず一歩後ずさった。全身の神経が警鐘を鳴らす。そこに立っていた和也は、まるで地獄の底から生還したかのような姿だった。乱れた髪、充血した目。上質なシャツから、微かにウイスキーが匂い立った。
「絵里、頼む」彼の声が掠れていた。「五分だけでいいんだ」
キッチンから奈央が現れ、一目で状況を察すると、ジャケットを掴んだ。「私、沙織のところにいるから。馬鹿なことはしないでよ」
彼女の背後でドアがカチリと閉まり、息が詰まりそうなこの狭い空間に二人きりで取り残された。最上階のマンションの壮麗さと比べると、あまりにも窮屈だった。
「美咲はL市に帰った」和也は断りもな...