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第5章
私は最上階のマンションの前に立っていた。指にはめられたダイヤモンドを見つめながら。ロビーの窓ガラス越しに、彼らの姿が見える。書類に身をかがめている和也と美咲、そしてソファの上で象のぬいぐるみを抱いているさくら。
早く入って、終わらせてしまおう。
エレベーターの時間が永遠に感じられた。ドアをくぐり抜ける頃には、手のひらに汗が滲んでいた。リビングからは、家族で映画を観ている夜の音が聞こえてくる――美咲の笑い声、さくらのくすくす笑う声、そして和也が茶々を入れる声。
指輪をハンドバッグの陰に隠そうとしたけれど、手は震えていた。
とにかく、自分の部屋に戻らなくちゃ。
けれど、さく...