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第6章
和也視点
またあの悪夢を見た。今回は、さらに鮮明だった。
『十二歳。クローゼットの中に隠れ、父が死んでいくのを見ていた』
だが、絵里の存在が、俺が心の奥底に葬り去ったはずのディテールを呼び覚ました。今回、俺はドアの隙間から殺人犯の顔をはっきりと見た――敵対する組の人間ではない。警視庁のジャケットを着た男だ。
森田英二。
『守れ……司の娘を……』
大理石の床を濡らす血と苦痛のなか、父はあの言葉を遺して逝った。まだ十二だった俺の耳に、それは空虚に響いただけだ。しかし十六年という歳月が流れ、今、俺のベッドの傍らで眠る絵里の穏やかな寝息を前にして、あの言葉の持つすべての意味が、つ...