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第12章
半年後
それから半年後。私が山口家の邸宅の庭に立っていると、過去が私を呼びに来た。
警視庁の佐藤桜捜査官は、かつての私とそっくりだった。隙のないスーツ姿に、真面目腐った表情。そして、いつも一歩先を行く犯罪者を追いかけることからくる、あの特有の疲労感を漂わせていた。
「水原さん」彼女は手を差し出しながら言った。「お会いできて光栄です。森田英二の事件でのあなたの活躍は、伝説的でした」
『水原さん』。その肩書は、もうサイズの合わなくなった服のように、奇妙な感じがした。
「絵里でいいわ」私は彼女の手を握り返した。「もう警察じゃないから」
「実は、その件で伺いました」彼女は手入れの行き...