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第10章
倉庫は、錆と裏切りの匂いがした。
森田はいい場所を選んだものだ。湾岸の、うち捨てられた輸送施設。文明から十分に離れており、私がどれだけ叫んでも誰にも聞こえはしない。ここ一時間、私がずっとそうしてきたように。
再び電流が体を駆け巡り、全身の筋肉が強張る。悲鳴を上げまいと舌を強く噛みしめると、血と反抗の味がした。
『意識を保て。奴に喋らせ続けるんだ』
森田は、手にした小さな器具の電圧を調整しながら言った。「山口が隠している本物の帳簿はどこだ。一族の秘密がすべて書かれた、例のあれだ」
ガラスを飲み込むような心地だったが、私は笑った。「私がそれを知ってるとでも? 潜入してまだ三週間...