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さりげなく

第七十二章 何気なく

クリス視点

ブラックヒルズは緊急事態を宣言した。あのライカンめ、よくも俺のパックを恐怖に陥れてくれたな! 衛兵の一人がロッジで死体となって発見された――初期にライカンの牢を警護していた、まさにその男だ。やつを殺したのは、復讐に違いあるまい。

「今日という今日は、あのライカンを生かしてはおかん! いったいどうやって、俺が殺しに来ることを嗅ぎつけたんだ?」俺は辺りを探りながら、独りごちた。我々の戦士たちは宮殿中に散開し、隅々までしらみつぶしに探していた。そう遠くへは行けなかったはずだ。

父が俺のマインドリンクに呼びかけてきていたが、無視した。父上には、ライカンの件に関わ...