




2話
サマー視点
足首に走る痛みに顔をしかめながら、私は慌てて立ち上がった。「大丈夫。ほっといて」意図したより荒い声が出た。見知らぬ人たちの前で流すまいとこらえていた涙で、声が詰まっていたのだ。
背の高い方の男が一歩前に出た。その黒い瞳が、不安になるほど強い力で私を捉えた。
「待って」彼の声は命令的でありながら、どこか優しさを帯びていた。私が背を向けようとする前に、彼の手が素早く伸び、私の手首を掴んだ。
私は腕を振り払った。その日の出来事からくる怒りと失意が、突然沸点に達した。「あなたのことなんて知らない!」私は叫び、涙が溢れそうになるのをこらえた。「触らないで!」
彼の完璧な顔立ちに何かがよぎった――驚き? 興味? 彼は手を下ろしたが、その視線は私の顔から離れなかった。
「おい――」彼が再び言いかけた。
「ほっといてって言ってるでしょ!」私は負傷した足首で可能な限り速足でその場を離れた。もう顔を伝う涙を隠そうともしなかった。
振り返らなかったけれど、あの黒い瞳が私を追っているのを感じた。まるで物理的な接触のように肌を焼く、その強烈な視線を。
―――
マンハッタン・クラブのクリスタルのシャンデリアが頭上で輝き、四杯目――いや、五杯目?――のウィスキーグラスを通して光を屈折させていた。私はこれまであまり酒を飲む方ではなかったし、ましてやマンハッタンのエリートが集うナイトスポットに一人で来るようなタイプでは絶対にない。『でも、他にどうしろって言うの?』プラザ・ホテルでの悪夢の後、口の中に残る裏切りの苦い味を鈍らせるには、涙よりも強い何かが必要だった。
一口飲むごとに喉が焼けるようだったが、それは心を蝕む痛みに比べれば何でもなかった。
「これは罪だな」左手から、気だるそうな男の声がした。「美しいレディがお一人で飲んでるなんて?」
私は顔を向ける気にもならなかった。彼の口調――金融街で嫌というほど馴染みになった、あの特有の、権利意識と見せかけの魅力が混ざった口調――に肌が粟立った。「興味ないわ」
「強気に出てるのか?」二人目の声が加わった。今度はもっと近くからだ。「まあまあ、お嬢さん。俺たちが楽しませてやるよ」
アルコールのせいだけでもないほど、頭がぐらぐらしていた。部屋が傾いで揺れているようで、クリスタルのシャンデリアが光の筋になってぼやけて見える。『何かがおかしい』アルコールによる酩酊感の霞を通して、忍び寄る恐怖が染み込んできた。これは普通の酔い方じゃない。
「あっち行って」私はなんとか言ったが、舌が妙に重く感じられた。「興味ないって言ったでしょ」『どうしてまともに考えられないの? 私に何が起こってるの?』
最初の男が近づきながらくすくす笑った。「目はそう言ってないぜ。もっと……プライベートな場所に行こうじゃないか」
立ち上がろうとしたが、足が言うことを聞かなかった。自分がどれほど無防備か悟り、恐怖が胸を掻きむしった。『ああ、神様、私の飲み物に何を入れたの?』
「おっと、お酒に弱いみたいだな」二人目の男が、見え透いた心配を声に滲ませて言った。「俺たちが助けてやらないとな」
強い手が私の両腕を掴み、引き上げた。抵抗しようと、叫ぼうとしたが、筋肉が反応しなかった。すべてがぼやけ、輪郭が薄れていく。
「離して!」私はどもるように言ったが、その言葉は自分自身の耳にさえほとんど聞こえなかった。
「心配するなよ、お嬢さん。俺たちがちゃんと面倒見てやるから」片方の男が囁き、その熱い息が私の耳にかかった。
彼らは私を、引きずるように、あるいは半ば抱えるようにして、クラブの奥へと連れて行った。薬による霞のかかった意識の中で、薄暗い照明、個室ブース、そして背後で遠ざかっていく高級なマンハッタンのナイトライフの音が認識できた。「VIP」と表示されたドアの前で立ち止まり、パニックが電気のように私を貫いた。
「いやっ」私は息を呑み、ありったけの力を振り絞って身を引こうとした。「やめて!」
男の一人が笑った。耳障りで不快な声だった。「威勢がいいな。気に入ったぜ」
ドアが開き、低い照明と革張りのソファが置かれた豪華な個室が現れた。男たちは私を中に突き飛ばし、私はよろめいてソファの一つに倒れ込んだ。手足が鉛のように重く、言うことを聞かない。
「お願い」私は囁いた。自分の声が弱々しいのが嫌だったが、恐怖でそれどころではなかった。「離して」
「リラックスしろよ」背の高い方の男が、手慣れた様子でネクタイを緩めながら言った。「楽しくなるぜ」
もう一人の男がドアに鍵をかけ、それから捕食者のような笑みを浮かべて私に向き直った。「これで誰も邪魔は入らない」
男たちがベルトのバックルを外し始めたとき、恐怖が私を襲った。その意図は吐き気がするほど明白だった。
「口を開けろよ、お嬢ちゃん」男の一人がズボンのジッパーを下ろしながら、嘲るように言った。「お前のその可愛い口に、いいものがあるんだぜ」
涙で視界が滲む。起き上がって、どこか逃げ道を見つけようとした。でも手足は鉛のように重く、動こうとしない。『こんなこと、ありえない。今日だけは。他のいろんなことがあった後で、こんなことって』
「やめ――」私の抵抗は、か細い囁きにしかならなかった。
突然、ドアが蹴破られた。ドア枠が砕け散るほどの勢いで。
「なっ――」男の一人が振り返ったが、その言葉は途中で消えた。
壊れた戸口に、非の打ちどころのないスーツを着た長身の人物が立っていた。霞む視界の中でも、その鋭い顔の輪郭と、見つめるものすべてを凍てつかせるような黒い瞳には見覚えがあった。
「彼女から手を離せ」その声は意外なほど静かだったが、部屋の温度が数度下がったかのように感じさせる何かがそこにはあった。
私を襲おうとしていた男たちは凍りついた。「てめえ、誰だと……待て、ミスター・スターク? わ、我々は……彼女があなたと一緒だとは知りませんでした」
『スターク』その名前が、霧に包まれた私の意識を貫き、衝撃的な認識が走った。横断歩道で会った男。ベントレーに乗っていた人。『ニューヨーク中の誰でもなく、よりによってまた別のスタークに助けられるなんて?』
「彼女に触れたか?」彼の声は穏やかなままだったが、その下に潜む脅威は紛れもなかった。これは私がアレクサンダーから慣れ親しんでいた、気楽な傲慢さではなかった――これは全く別物だ。かろうじて抑えられた、生の力。
二人の男は慌ててズボンのジッパーを上げ、その顔には恐怖がありありと浮かんでいた。
「ミスター・スターク、わ、我々は……まだ彼女には触れていません、誓って!」背の低い方の男が、防御的に両手を上げながら後ずさった。
立とうともがいたが、足に力が入らなかった。床に倒れ込む代わりに、私は何か固いもの――誰かにぶつかった。力強い腕が私を支え、ふと、キリッとした冬の清々しい香りが微かに漂ってきた。
「熱い……」私は呟き、彼のスーツの冷たい生地に身を寄せた。
完全な静寂が一瞬あった。それから、その力強い腕が私の膝の下をすくい上げ、軽々と抱き上げた。突然の動きに再び部屋が回り始め、私は小さく嗚咽をもらしながら彼の肩に顔を埋めた。
「お願い……」私は息を呑んだが、何を求めているのか自分でも分からなかった。
彼は答えなかったが、私を抱く腕にわずかに力がこもった。その仕草に、火照った体が奇妙に震えた。あるいは、それはただ薬のせいかもしれない。すべてを把握するのが難しくなり、現実が輪郭を失っていく。
「ジェームズ」その一言は、命令の重みを帯びていた。
「はっ、サー」新しい声。きびきびとしてプロフェッショナルな響きだ。スタークの後ろから二人目の男が入ってきていたことに、私は気づきもしなかった。
「奴らが二度と他の女に手を出せんようにしろ」ブランドンが命じた。その声は氷のように冷たかった。「永久にな」
「喜んで、サー」
彼が私を抱きかかえて、あの恐ろしい部屋から運び出すと、世界が揺れた。目を丸くしたクラブの客たちの間を通り抜け、ぼんやりとプライベートエレベーターだと認識できる方へ向かっていく。