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第599話私は売らない

中年男はウィノナをじろりと見やり、目を細めた。「何者だ、あんたは? もしこれをダメにしたらどうする? そもそも弁償できるのかね?」

レベッカはこれほど傲慢な態度に接するのは久しぶりだった。「触っただけでダメになるほど繊細な服なら、店だって仕入れないわ」

彼女は見慣れないロゴに目をやった。「どこの無名ブランドですって? この店は高級品を扱っているのよ、中古のガラクタじゃないわ」

レベッカは普段なら年長者を敬うが、この男の態度は我慢ならなかった。

「海外のブランドで、手作りの紳士服を専門にしているんです。かなりニッチですけど」ウィノナが口を挟んだ。

レベッカは驚いた。「あなたがこれを知っ...