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361話

焦げた革の匂いが鼻をついた。窓際のシートは酷い有様で、まだぶくぶくと泡を立てており、背もたれには何かが飛び散り、原形を留めないほど腐食していた。

もしアンソニーが間一髪でブレーキを踏み、ウィノナに向けられた硫酸を逸らさなければ、今頃溶けていたのは彼女の顔だっただろう。

ウィノナとレベッカは、車の反対側のドアに押し付けられるようにしており、二人とも腕に火傷を負っていた。

アンソニーが叫んだ時、ウィノナは反射的に窓に手を伸ばしたが、途中で気づいた――窓が下がるのは遅すぎる。その一瞬の躊躇が、相手に準備の時間を与えてしまった。彼女が身を引いた時には、もう避けられなかったのだ。

最後の瞬間、レ...