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第36章

中島由美子の手入れの行き届いた顔には、今、憂いの色が満ちていた。

彼女は向かいのソファでくつろいだ姿勢の北野紗良を見つめ、意図的に抑えた不安を滲ませた声音で、最後の試みを口にした。

「紗良、北野グループの今の状況は、あなたも知っているでしょう。資金繰りに大きな問題が生じて、銀行側からの催促も厳しくなってきているわ。このままで何も手を打たなければ、私たち北野家は......本当に終わってしまうかもしれない」

彼女は一瞬言葉を切り、北野紗良の整った横顔に視線を走らせると、わずかに気付かれない程度の圧力をかけるように話題を変えた。

「わかっているわ、お父様は早くに亡くなって、あなたは女の子...