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55話

「グレース

私の顔が熱くなるのを感じながらそう思った瞬間、彼は微笑んだ。

「セシルが持ち出したのかと思ったけど、これは完全に君のものだね」

私は笑顔を作り、自分のバインダーを見られて恥ずかしくならないよう努めた。

「彼女はどこかから手に入れたんでしょうね。ありがとう」と言いながら、バインダーを受け取り、その重みを胸に抱きしめた。私たちの指が一瞬触れ合い、背筋に小さなときめきが走った。「それと、捜査がうまくいくといいですね」

彼は温かく誠実な笑顔を見せ、私の心臓は一拍飛ばした。「ベストを尽くすよ」と彼は言った。「また後でね、グレース」

下を見ると、以前バインダーを留めていた輪ゴムはなくなってい...