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32話

「チャールズ」

俺は嘘つきだった。

この状況に足を踏み入れた時、一体何が待ち受けているのか見当もつかなかった。だが、一度口にした以上、その言葉に責任を持たねばならない。グレースに対して日に日に強まる繋がりを無視するのは、もはや困難になってきていた。彼女の存在は俺の思考の隅々にまで入り込み、彼女の香りは俺の心のあらゆる場所に漂っていた。否定しようとしても無駄だった。俺は彼女に引き寄せられていた—理性では説明できない磁石のような引力に。

あのキスは、まるで火種に火花が散ったような、あるいは既に燃え盛る炎にガソリンを注いだようなものだった。

だが、欲望に屈するという考えは諸刃の剣だった。一方で...