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ア・スイッチ・イン・ザ・ムード

「エローナ視点」

私はゆっくりと階段を降りていた。クレイン先生は私を見て、にやりと笑っていた。私の心臓は早鳴りしていた。ただ願うのは、彼が私の本を持ってきただけで、このあと帰ってくれることだけ。今や私の秘密はバレてしまった。それだけでも十分恥ずかしいことだった。「中へどうぞ」と父が彼に言った。

いや、そんなの望んでいない。くそっ!

「ありがとう」クレイン先生は黒いスーツ姿で家の中に入ってきた。そのスーツ姿に私はよだれを垂らしそうになった。彼は私の本を手に持っていた。それだけは嬉しかった。父は彼の後ろでドアを閉めた。

「調子はどうだい、トリスタン?」父が尋ねた。「コーヒーでも飲むかい?ビ...