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第249話セシリアの両親を殺した人

朧月夜に覆われた夜。廃墟と化した工業団地には、夜風に乗って血の臭いがむせ返るほどに漂っていた。

辺りは不気味なほど静まり返り、聞こえるのは時折響く低い唸り声と、鎖が地面を引きずる重い音だけだ。

有刺鉄線のフェンスに囲まれたコンクリートの上には、黒い毛皮の大型猟犬が数頭立っていた。犬たちは中央で縛り上げられた男を取り囲み、牙を剥き出しにして唸り声を上げ、いつでも飛びかかれる体勢でいる。

男の顔は血まみれで、口には引き裂かれた布が詰められ、全身をわなわなと震わせていた。その目は恐怖に満ち、必死にもがくが、首にかけられた鉄の鎖が彼をその場に固く繋ぎ止めている。

さほど遠くない場所で、闇の中か...