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69話

私はフェンリルがどこにいるのか正確に知っていた。空気に漂っていたのは彼の匂いではなくて、彼の存在の温もりだった。私の体は磁石のように、まるで自分の意志を持つかのように彼の方向へと向かっていた。

今なら彼がいつも危険な時に私を見つけ出せる理由がよく分かる。それは奇妙なことだった、純粋な本能のように、私たちの魂がお互いの正確な居場所を常に知っているかのように。

寒さはどんどん厳しくなっていた。サムハインの暖かい焚き火から離れると、空気は攻撃的なほどに冷たく感じられた。

私は意図的に湖に近づき、静かに歩いた。露で湿った葉は柔らかく、もはや足元で音を立てなかった。

フェンリルは背中を私に向け、...