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68話

私は彼女の腕が目まぐるしいスピードで空気を切る音を聞いた。身を乗り出し、避けて反撃する準備をした。

周囲の全てが完全な静寂に包まれた。ダネスティたちは驚愕の表情でその場面を見つめていた。

おそらくフェンリルは、これから起こることの後で私を牢に入れるだろう。彼の手の届かない恋人に逆らった私を、囚人のように、野蛮人のように扱うのだ。彼が何をしようと構わない。彼は私を一生閉じ込めておくこともできる。だが、もう彼女からの理不尽な屈辱は受け入れない。

私はまばたきをし、彼女の爪が肌を貫く衝撃を覚悟した。

その衝撃は来なかった。

伸びた爪を持つ大きな手が彼女の細い手首を掴み、その場に固定していた。私は眉を...