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53話

周囲の世界が静まり返り、小動物の音や梟の鳴き声さえも聞こえなくなった。

フェンリルは私を押し、背中が木の粗い幹に当たるほど強く寄せ、キスを深めた。私の脚の間に熱が集中し、思わず喘ぎ声が漏れた。

私は彼の柔らかい茶色の髪をつかんだ。指の間でカールする髪の感触が好きだった。

彼の息はウイスキーとミントの香りがして、それは酔わせるような混合物だった。そして新鮮な松の香りと湿った土の匂いが、私の感じることのできる唯一のものだった。

ほんの一瞬、これがとても正しいことのように感じた。私たちがとても正しく思えた。しかしすぐに、その考えを振り払い、頭から消し去った。

これは単に大声で叫ぶホルモンに...