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76話

【サラ】

母の料理の豊かな香りが、ピアスタワーの優雅なプライベートダイニングルームに漂っていた。マーガレットはトンプソン夫人の抗議にもかかわらず、自分で料理することを主張した。母の手料理には、どんなプロのシェフも再現できない温かさがあるのだと。彼女の質素な木綿のエプロンと部屋のクリスタルシャンデリアのコントラストが、私の胸を締め付けた。

セオドアがビジネスの電話に出ている間、マーガレットは私を脇に引き寄せた。彼の長身のシルエットが床から天井まである窓に映し出されていた。年月の知恵が刻まれた彼女の目には、いつもの母親らしい心配の色が浮かんでいた。

「あなたたち、また喧嘩してるの？」彼女はセ...