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62話

【サラ】

空調がフル稼働しているせいだろうか、私は頬に熱が上るのを感じていた。セオドアの香水が私の小さな寝室に漂い、その高級な香りが医学の教科書と中古家具に囲まれた部屋で妙に場違いに感じられた。私は薄い夏用の毛布の下に横たわり、部屋の反対側にいる彼の存在を強く意識していた。彼はトンプソン夫人が無理やり持たせたという分厚いダウンの掛け布団に包まれていた。

「お金は受け取れないわ」と私はきっぱりと言い、天井に目を固定したまま続けた。「だから、もうその話はやめて」

「なぜだ?」彼の声には、病気で少し弱々しくなっているとはいえ、あの馴染みのある権威が感じられた。「俺のお金が他の誰かのお金と何が違...