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61話

【サラ】

私はセオドアの胸に手のひらを当て、彼を押しのけるつもりだったが、指先に感じる早い鼓動に動けなくなってしまった。彼の仕立ての良いシャツを通して、まだ肌に残る熱を感じることができた。彼の香水—あの微かな、高価な香り、私がすっかり慣れ親しんだ香り—が彼の体から放たれる温もりと混ざり合っていた。私たちの間のわずかな空間に緊張感が漂った。

セオドアは彼の胸に置かれた私の手を自分の手で覆い、親指が私の指の関節をなでた。その優しい触れ方に、背筋に震えが走った。「サラ」と彼は呟いた。その声は病気のせいで低く、かすれていた。

「まだ熱があるわ」と私は囁いたが、手を引く素振りは見せなかった。彼の暗...