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第355章:あなたが指揮した

【セオドア】

執務室のドアを叩く切羽詰まった音が、四半期の取締役会資料の検討を遮った。許可を待たずに入ってきた秘書の顔は青ざめていた――その、手順を無視した行動だけで、私は即座に最高度の警戒態勢に入った。

「ピアス様、ル・ベルナルダンで事件が。サリバン様と特徴の似た女性が襲われたとのことです」

全身の血が凍りついた。秘書が言い終わる前に、私はスマートフォンを手に取り、すでにサラの番号を呼び出していた。コール音が一度、二度と鳴り響く間、一秒が永遠にも感じられた――

「セオドア?」彼女の声ははっきりとしていて、無事そのものだった。気づかぬうちに全身にみなぎっていた緊張が、一気に解けていくの...