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149話

「サラ」

私は混雑した宴会場を見渡しながら、ダニエルの姿が見当たらないことに気づいて不安が募っていった。たった今までデザートテーブルの近くに立っていたのに、次の瞬間には消えてしまっていた。

「マイク」私は彼の袖をつかみ、声から心配を隠せなかった。「ダニエル見なかった?さっきまでここにいたのに...」

「セオドアが連れて行ったよ」マイクは宴会場の向こう側を漠然と指さした。いつもの陽気な表情に心配の色が混じっていた。

視線を追うと、セオドアとダニエルが隅のテーブルに二人で座り、石のように表情を変えない警備員が人間の彫像のように近くに控えているのが見えた。二人の間に置かれた高級ウイスキーのボ...