4話
王ポンは驚いた。この李小川というやつは、本当に度胸が据わっているな。劉東にこんな風に話しかけるなんて、痛い目を見るに決まっている。
王ポンは以前、一緒に入社した新人が劉東に逆らったせいで、その場で骨折させられ、病院で半月も寝込んだ挙句、一銭ももらえなかったという話を聞いていた。さらに、闇社会からの脅しまで受けたという噂もあった。
様々な噂の中で一つだけ確かなことがある。劉東は闇社会に繋がりがあるということだ。
王ポンは急いで李小川の服の裾を引っ張り、小声で言った。「李小川、彼を怒らせるな。ひどい目に遭うぞ」
李小川は意に介さない様子で、にこにこしながら劉東を見つめ続けた。
劉東は顔を曇らせた。もう長いこと、こんな生意気な奴に出会っていなかった。どうやら、自分の恐ろしさを知らない者が出てきたようだ。
彼は今日この小僧に見せしめを食らわせ、蘭亭会所の全員に劉東の威厳は健在だと思い知らせてやろうと心に決めた。
劉東は一歩一歩、李小川に近づきながら、王ポンを叱りつけた。「デブ、どけ。お前の出る幕じゃない」
王ポンは気まずそうに笑うと、素早くその場を離れたが、遠くには行かず、ドアの外からこっそり様子を窺っていた。後悔の念が込み上げてきた。「もっと李小川を説得すればよかった。ああ、これで彼は痛い目を見るぞ」
劉東は李小川の前に立ち、睨み合った。劉東は威圧感と視線で李小川を押しつぶそうとしたが、李小川はにこにこしたままで、まったく動じる様子がなかった。
「床に伏せろ、腕立て伏せだ！」劉東は怒鳴った。
「やりません」
「なら教えてやる」言葉が終わるか終わらないかのうちに、劉東は李小川の顔面に向かって一発殴りかかった。
大きな拳が流星のように飛んできた。
劉東の口元には勝ち誇った冷笑が浮かんでいたが、次の瞬間、自分の拳が外れていることに気づいた。拳の行き先は空気だけ。劉東はよろめき、もう少しで地面に倒れるところだった。
プッ！
誰かが思わず笑い声を漏らした。
李小川は相変わらずにこにこと彼を見つめ、微動だにしなかった。
劉東は体勢を立て直し、激しく怒った。さっきはきっと目の錯覚で外しただけだと自分に言い聞かせ、今度こそ奴の顔を腫れ上がらせてやると決意した。
彼がもう一度拳を固め、殴りかかろうとした時、ハイヒールが床を打つ音が遠くから近づいてきた。そして、骨の髄まで妖艶な声が響いた。「劉マネージャー、また何をしているの？」
劉東はまるで金縛りにあったかのように体が硬直し、拳をすぐに緩め、人を食いそうな顔つきが一瞬で笑顔に変わった。来た人に向かって言った。「蘇総経理、新人の指導をしていたところです」
蘇媚は何も言わず、軽く皆を一瞥した。その一瞥だけで、全員の魂が彼女に引き寄せられるかのようだった。劉東の目にも淫らな色が浮かび、思わず唾を飲み込んだ。
蘇媚、その名の通り、まるで妖艶な狐のような女性だった。彼女は美しく、生まれながらに人の心を惑わす能力を持ち、一挙手一投足が大人の魅力を放っていた。
彼女は蘭亭会所の総経理で、羅盛霆は会所全体の運営を彼女に任せていた。
この数年、蘭亭会所は彼女の丹念な経営のもと、発展の勢いが凄まじく、江寧市内のどの会所も太刀打ちできなかった。
劉東は自分を高く買っていて、会所内で好き放題やっていたが、蘇媚の前では頭を下げるしかなかった。
彼はよく蘇媚を押し倒す妄想をしていたが、それはあくまで妄想でしかなく、実行する勇気はなかった。
なぜなら、彼女は取締役の羅盛霆と関係があると噂されていたからだ。さもなければ、羅盛霆がどうして二十七、八歳の彼女にこれほど大きな会所の管理を任せるだろうか。
蘇媚の視線が全員を一巡りし、最後に李小川の上で止まった。彼女は男について詳しく、男が彼女を見たときに何を考えているかも知っていた。表情は心を映す鏡、人の顔を見れば心の中が分かるものだ。
しかし、李小川の顔には違う表情が見えた。彼はにこにこしながら、確かに彼女の豊かな胸元を見ていたが、その目には淫らな欲望が見られなかった。
蘇媚は長年こんな若者に出会ったことがなく、好奇心を抱いた。李小川を指差して言った。「あなた、私のオフィスで少し手伝ってくれる？」
他の人たちは目を丸くして、羨ましそうに李小川を見つめた。こいつはどんな幸運を掴んだのか、こんな美女に手伝いを頼まれるなんて。
劉東も信じられない様子で、喉を鳴らして唾を飲み込み、言った。「総経理、何かあれば私がやります。この小僧は来たばかりで何も分かりません。彼に何ができるというんですか？」
李小川は態度を急変させた劉東を軽蔑し、彼の言葉に反論した。「僕にできることはたくさんありますよ。あなたにできないことだってね」