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608話

「以前、義兄にこんな話をしても、きっと理解してもらえなかっただろうけど、今なら分かってくれるはずだ」

私は彼に自分の「不安」を知ってほしかったんだ。

「鉄蛋、安心しろよ。梅子はお前のことをそんなに好きなんだから、お前から離れるわけがないだろう?」義兄は私の肩を叩いた。

「義兄さん、分からないことがあるんだよ。はぁ、もういいや。そのお客さん、まだ来ないのかな」

話をすれば影が現れるとはこのことだ。

言葉が終わるか終わらないかのうちに、王という苗字のお客さんが玄関に停めた車から降りてくるのが見えた。

「鉄蛋、お客さんが来たぞ!」義兄が言った。

「ああ、分かった。梅子を呼んできてくれないか。先にマッ...