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175話

このままでは何の解決にもならないと思った。二回ほど拳を避けることができたものの、体力的には明らかに銭大貴に劣っている。

咄嗟に「顧芬」の名前を叫んだ。銭大貴はハッとして拳を引き、質問してきた。

「お前、顧芬を知っているのか?あの女が俺を盗撮させたのか?」

本当はまだ正体を明かしたくなかったが、今はもう選択肢がなかった。

銭大貴にそう問われて、言い逃れしても疑われるだけだと悟った。おそらく彼は私を連れて顧芬と対質させようとするだろう。

だが、私も全く無力というわけではない。手元には動画があり、それは銭大貴の弱みになる。今大声を出せば、必ず周囲の人が集まってくるはずだ。

そうなれば通報さ...