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294話

東林市、玄武峰。

紀貝尼と呉大隗が真っ先に玄武峰の頂上に辿り着いた。

玄武峰の下方を見下ろすと、数百メートルの高さに紀貝尼はめまいを覚え、独り言を呟いた。「おかしいわね、どうして目眩がするのかしら。玄武峰はたかが数百メートルの高さで、私が以前登った山々よりも低いのに」

呉大隗も首を傾げた。そうだ、紀さんはただ山を登っただけなのに、こんな症状が出るはずがない。

数年前、紀貝尼はあるバラエティ番組に出演し、標高三千メートルの高峰を登った。その時、頂上に到達した紀貝尼の体調は最も良く、むしろ番組の他のタレントたちは嘔吐や下痢に苦しみ、まともな状態を保てなかった。紀貝尼だけが最後まで踏ん張...