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55話

彼はむしろ積極的に祝珩の腰に抱きつき、素直に顔を祝珩の胸に埋めた。

抱きしめた体から伝わる柔らかく艶やかな感触。だが祝珩の胸中は、先ほど監視カメラで見たβの黎鴻が同僚たちに向けたあの穏やかな笑顔よりも、さらに重く、焦りを感じていた。

彼はβに仕事に行くことを許したものの、心の中では矛盾した思いを抱えていた。翌日には早速、買収の件を緊急に処理するよう人を差し向けた。

会社の半年後の拡張計画を無理やり日程に組み込み、祝珩は特別な手段まで使った。ただβを最短で自分の元に移すためだけに。彼が自分の目の届く場所にいてこそ、ようやく少し安心できた。

そのために、本来順調に進んでいた会社の手順を乱し、多くの...