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155話

少女は元気いっぱいで、異議を許さない勢いで彼を玄関まで見送り、愛情たっぷりのハートマークを指で作ってみせた。

様々な色と味の魅惑的なスイーツが小さなテーブルに山積みになっていた。凌落はそのうちの一つを開け、口に入れた瞬間、ベータである彼は眉をひそめた。

甘すぎる。

本来なら極上の香りを放つはずのケーキが、彼の慣れ親しんだ味を失い、もはやあの美味しさではなくなっていた。

七階には二軒の部屋だけがあり、向かい合って配置されていた。どちらも扉はぴったりと閉ざされていた。

突然、赤褐色の無垢材でできたドアの一つがそっと開き、カジュアルなパジャマ姿の痩せた青年が出てきた。

青年は向かいの住人の扉の前...