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504話

拳の試合で優勝したものの、龍飛の気持ちは想像していたほど高揚していなかった。自分はただ雷東の手駒に過ぎず、黒鷹組織の金儲けの道具でしかないことを理解していたからだ。

だが、一つだけ龍飛が喜ぶべきことがあった。それは陸文山の遺志をようやく果たし、忠義庁の拳闘大会優勝の証である拳神金杯を取り戻したことだった。

「これが拳神金杯か?」

二人の黒服の警備員が漆塗りの赤木の箱を土俵の中央に捧げ持ってきたとき、龍飛の視線はすぐにその箱に釘付けになった。

「まずは龍飛選手が静海市の新たな拳神となったことをお祝い申し上げます。忠義庁の伝統に従い、彼には拳神金杯が授与されます」

美しい司会者は先ほどの...