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40話

同僚が帰ると言い出すまで、彼は振り向くこともなかった。彼女がバーの入り口まで歩いた時、わざと振り返ってバーの名前「17CLUB」を記憶に留めた。

その夜、彼女はずっと上の空で、自分が何を期待しているのかもわからなかった。姉の夫とも姉とも一切の関わりを断つと自分に言い聞かせていたはずなのに、心の中の小さな炎が時折燃え上がり、消えようとしなかった。

このままでは自分に狂わされてしまうと彼女は感じた。結局、自分の決断が甘いのだ。

家に着いて鍵を開け始めた時、階段の下から男性の落ち着いた足音が聞こえてきた。

何かに取り憑かれたように、彼女は鍵を回す手の動きをゆっくりにした。

その瞬間、彼女は...