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1127話

間もなく目覚まし時計が鳴り響いた。着替えを済ませて部屋を出ると、妻はキッチンで朝食の準備をしていた。

妻は私の姿を見るとやさしく微笑みながら挨拶してきた。その表情は極めて自然だった。

実は私は妻のことをよく知っている。長年連れ添ってきて、妻が後ろめたいことがあるときは、目が落ち着きなく揺れ、私と視線を合わせられなくなる。

だが今見る限り、妻は十分に堂々としていた。

もし本当に私を裏切るようなことをしていたなら、その目に何かしらの綻びがあるはずだ。

私は洗面所に入り、身支度を始めた。

会社に着いてからも、今日は仕事が忙しくなかったこともあり、また余計な想像を巡らせ始めてしまった。

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