4話
ワンハオグランドホテル。
一台のロールスロイス・ファントムが到着し、ホテルの入口で待機していた従業員たちが一斉に駆け寄ってきた。
「龍帥、ワンハオに着きました」
鉄狼が先に車から降り、近づいてきた従業員たちを制して、自ら恭しく楚修のためにドアを開けた。
ホテルスタッフの畏敬の眼差しの中、楚修の姿がゆっくりと現れた。
目の前のホテルに視線を向け、その眼差しは冷たく凍てついていた。
その頃、ローズホール。
満席の客で溢れ、豪華な結婚式の装飾が施されていた。
今日は王家の当主である王恺と林家の当主である林紫の結婚式が行われ、南城の名家貴族が招かれていたが、来ているのはほとんどが林家や王家と同じレベルの二流家族だった。
林紫は一年前、林家が修河グループを吸収合併するのを手助けして以来、老当主が亡くなる前に家督を彼女に譲っていた。
「才色兼備、まさに天が結び付けた仲ですね！」
「お二人が、こんなに素晴らしい娘さんを育てられたことが本当に羨ましい」
「………」
林紫の両親である林啓と孫琴が主賓席に座り、招待客たちに囲まれていた。皆が次々と褒め言葉を述べる中、孫琴も嬉しそうに、娘と王恺の素晴らしさを延々と語っていた。
ステージ上の王恺と林紫も喜びに満ちた表情で、周囲の招待客と談笑していた。
「安心して、死亡証明書はもう手配済みだ。印を押せばすぐに有効になる。結婚式が終わったら、婚姻届を出せるよ」
王恺が林紫の耳元で小声で言うと、林紫はその言葉を聞いて、さらに笑顔を輝かせた。
「そういえば、楚修の妹の楚嵐はどうなってる？」
林紫が小声で尋ね、唇の端には軽蔑の色が浮かんでいた。
「俺のやることを信用してないのか？せいぜい一ヶ月もすれば、南城のナイトクラブにまた一人、売り物が増えるさ。部下から聞いたんだが、楚修の義姉さんは今でも結構な稼ぎだそうだ。そのうち楚嵐のガキもそっちに送って、義姉さんの相手にさせるつもりだ。高校三年の処女だぜ、興味を持つ客は絶対に多いさ」
王恺は笑いながら言った。
「よくやったわね、ご褒美をあげる」
そう言って林紫はつま先立ちになり、王恺の頬にキスをした。
司会者はそのタイミングを捉え、すかさず口を開いた。「新郎新婦は早く洞房に入りたいようですね」
会場全体が笑い、拍手が「パチパチパチ」と響き渡った。
そのとき、閉まっていたローズホールの大扉が突然開け放たれ、林雪が慌てた様子で小さな熙熙を抱きかかえて駆け込んできた。後ろには追いかけてきた数人の警備員がいた。一瞬にして会場の視線がすべて林雪に注がれた。
音楽以外の音が途絶え、祝いの音楽だけが流れていた。
王恺と林紫の表情は、この瞬間、凍りついたように硬直し、極度に冷たいものへと変わった。
林啓夫妻の顔はさらに真っ黒に変わっていた。彼女は林雪に熙熙を連れて走り回らないよう、特に結婚式に連れてこないようにと注意していたのに！
林雪の腕の中の子供を見て、すぐにささやき声が広がった。多くの人々が、林紫は夫がいて娘まで産んだ「生きた寡婦」だとか、離婚もしていないのに王家の若旦那と結婚したとか、小声で噂し始めた。
これらの声が林紫の耳に入り、彼女を狂気に駆り立てた。
「追い出しなさい！」
林紫は林雪と彼女の抱く小さな熙熙を見て、冷たく命じた。
警備員たちは一斉に林雪に向かって駆け寄り、スタンガンを手に彼女を無理やり会場から引きずり出そうとした。林雪も姉がこれほど冷酷だとは思わず、恐ろしい形相で近づいてくる警備員たちを見て、小さな熙熙は怖くて大声で泣き出した。
そのとき。
一つの声がホールの外から響いてきた、霜のように冷たく。
「誰が敢えて？」
すべての視線がその声に引き寄せられ、入口の方を見た。
林紫と王恺も例外ではなく、その声は高位に長く居た者のように聞こえた。
足音が次第に近づいてきた。
二人の凛とした姿がホールに足を踏み入れた。
そのうちの一人が風のように林雪の側に駆け寄り、七、八人の警備員があっという間に鉄狼の片手で全員倒された。動きは流れるように滑らかで、一人また一人と地面に倒れ、うめき声を上げていた。
これらの警備員を倒した後、鉄狼は耳元のBluetoothイヤホンを軽く押し、眉をひそめ、楚修の側に戻った。
「龍帥、死亡証明書はすでに修正されました」
低い声で告げた。
「ああ、下がっていろ。用があれば呼ぶ」
「はい」
鉄狼は式台上の林紫と王恺に一瞥を送り、この二人の姿を脳裏に焼き付け、その後背を向けて去った。
楚修だと気づいた時、王恺の目から緊張感が消え、残ったのは完全な軽蔑だけだった。一方、林紫の目には侮蔑と憎悪が浮かんでいた。
「楚修、あなたまだ生きていたの！」
林紫は憎々しげに口を開き、楚修の名を叫んだ。
たちまち会場は再び沸騰した。今日は王恺と林紫の結婚式だが、南城の人々は皆、林紫がまだ離婚していないことを知っていた。ただ夫の楚修が七年間姿を消していただけで、今や本人が現れたのだ。
この緑の帽子、十分に緑だ。
楚修は林雪の前に進み出て、冷たい目で見つめた。
彼の傍らで、林雪はそっと彼の服の端を引いた。楚修は顔を傾け林雪を見ると、彼女は下唇を噛み、わずかに首を横に振り、目には懇願の色が満ちていた。
彼女は楚修が衝動的に行動しないよう願い、彼が傷つくことを心配していた……
今の楚家はすでに没落しており、楚修にはどこから林紫や王恺と戦う資本があるというのか？！
楚修の心は、この瞬間、ほとんど溶けてしまいそうだった。
この女性はなんと優しく、なんと温和なのだろう。こんなに自分を愛してくれる女性を、自分は丸七年も生きる屍のような日々を送らせてしまった。自分は何様のドラゴンだというのか！
目に宿った殺意が、強引に押さえ込まれた。
楚修は手を出さなかった。林雪を悲しませたくなかったし、彼女が家族の前で立場を悪くすることも望まなかった。また、自分の娘の前で暴力を振るいたくもなかった。
「外でやっていけなくなったから、ここに食い込もうとしてるの？恥知らずね！」
林紫の目は嫌悪に満ちていた。「本当に吐き気がする」
「これは婿養子ってやつですか」
「ハハハ、まさか今時、婿入りする男を見られるとは思わなかった。面白いね」
「……」
招待客たちは楚修を指さし、あざ笑いの表情を浮かべていた。彼らにとっては、結婚式に参加するよりもずっと面白い光景だった。
そして今、林紫の顔は完全に青ざめていた。
顔色は鉄のように青く、腹の中は怒りで満ちていた。
「林雪、この野郎を連れて出て行きなさい！」
林紫は手で林雪を指さし、大声で怒鳴った。
「私はあなたの法的な夫だ、なぜ出て行かなければならない」
楚修は林紫を無視し、林雪の手を引いて近くの食事テーブルに座り、静かに食べ始めた。
この態度は他の人々の目には、厚顔無恥にしがみついているようにしか見えなかった。
「これはあまりにも恥知らずだ…」
「ツツツ、かつては絶頂を極めた楚家に、こんな無能がいたとは思わなかった」
「ハハハ、こんなレベルまで食い込む婿養子は初めて見たよ」
「………」
林紫がさらに口を開こうとしたとき、王恺が彼女を引き留め、自信に満ちた笑みを浮かべながら、自分に任せるよう合図した。