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350話

「今の皇甫永安にとって唯一の不快事と言えば、腹心の龐飛の死だろう」

東宮の禁衛統領であった龐飛は、皇甫永安の命を受けて麒麟才子・林修の暗殺に向かったが、結果として街頭であっけなく命を落としてしまった。今に至るまで犯人の手がかりすら掴めていない。

「麒麟才子、天雲の林修か...どうやら本宮はお前を甘く見過ぎていたようだな」

皇甫永安の目に凶光が宿る。

「もしお前が本宮に従っていれば、竜に従う功として、将来は出将入相の地位も約束されていたものを。残念ながら、間違った主に付いてしまったな。そして、間違った主に従った者の末路はただ一つ」

そのとき、寝殿の外から恭しい声が聞こえてきた。

「殿...