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276話

デブ男が鉄狼の前に歩み寄り、湾刀を振り上げて鉄狼の頭めがけて振り下ろした。

「カン!」

鉄狼は反射的に剣を上げて受け止めた。

強大な力が押し寄せ、「ドン」という音とともに、鉄狼の足元の石畳が砕け、彼の体は半寸ほど沈み込んだ。

周囲に現れた赤い霧が、次々と鉄狼の体内に流れ込んでいく。彼は自分の体への支配力が徐々に弱まっていくのを感じていた。四肢は言うことを聞かず、意識さえもぼんやりとし始めていた。

このまま続けば、鉄狼も周りの龍神衛たちと同様に、意識を失い、完全に抵抗する力を失ってしまうだろう。

最も鉄狼を驚かせたのは、この体内に入り込む赤い霧の作用の速さだった。内力で追い払う間もなく、すでに神...