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270話

朝の八時を少し過ぎたころ、やっと謝瑩の姿が梅龍の前に現れた。梅龍は嬉しそうに笑みを浮かべた。今日の謝瑩はダウンジャケットを着ていたが、それでもしなやかな体つきは隠せていなかった。呉さんに連れてこられた梅龍は、振り返って呉さんに頷いて合図すると、謝瑩の方へ歩み寄った。

謝瑩も梅龍を見つけ、表情を輝かせると、威勢よく前の人混みをかき分けて飛び出してきた。そのまま梅龍の胸に飛び込んできた。梅龍が反応する間もなく、謝瑩の体から漂う香りが鼻腔をくすぐり、思わずよろめきそうになった。

謝瑩は梅龍の首をきつく抱きしめ、涙をぼろぼろと流した。「小龍、ありがとう。あなたがいなかったら、私はきっと帰ってこれな...